TIUストーリー スポーツ
陸上は、高校でやめようと思っていた。
高3の春に足首を痛めたことが、きっかけだった。
「大学の監督が、お前に会いたいと言っているぞ」
陸上部の顧問に呼ばれたのは、夏のインターハイが終わって少し経った頃だった。
「一緒に箱根路をめざさないか」思いもかけない誘いだった。
正月にテレビで見ていた場所に、自分が立つことなんて想像もできなかった。
まだ完治していない脚も、不安だった。
「大丈夫だ。俺を信じてほしい」強い言葉だった。
隣で頷いていた陸上部顧問が、言葉を継いだ。
「大学の学びは、お前の将来の選択肢を広げるぞ」
みんなに後押しされ、心が決まった。
脚の怪我が完治し痛みが癒えるまでは、一人だけ別メニューでの練習になった。
みんなと一緒に走れない悔しさで悶々としていると、
練習につきあってくれた先輩マネージャーが「焦るなよ」と声をかけてくれた。
ゼミの先生は、「メンタルトレーニング」の重要性を教えてくれた。
呼吸によって緊張状態がコントロールできること、
また、目標設定の仕方でパフォーマンスが変わってくることを学んだ。
孤独だった別メニューの練習が、次第に充実したものに変わっていった。
じきに、みんなと一緒に走れるようになった。
先輩が勧めてくれた『スポーツトレーニング論』を履修してからは、
コーチたちの組んだ練習メニューに、自分なりの提案ができるようになった。
「やるじゃないか」さりげなく肩を叩く、仲間の言葉がうれしかった。
怪我の治療も長距離走の練習も、ひたすら自分自身との戦いだと思っていた。
が、常に自分のことを見てくれ、さりげなく背中を押してくれる人たちがいた。
自分は一人じゃない。
みんながいるからこそ、あの場所をめざせる――
今日も一秒を絞り出すために、仲間たちとトラックを駆ける。
感謝の気持ちを胸に。
※写真は実在の新皇冠体育生ですが、本文とは関係ありません。
※2018年10月現在のデータです。